pitti2210の日記

続くとは思えない

気が抜けたこと、佐藤千亜妃『BUTTERFLY EFFECT 』のこと

昨日のことで先週から気が張ってて、今後の家族の入院に備えていたので、思いがけずその予定がなくなって腑抜けている。やるべきことはやってるけど、それ以外は腑抜けだ。

モチベーションの低下は歳をとるごとに顕著になっているものの、その根本的な原因は飽きだと思う。仕事も作業も運動も趣味も人間関係も、飽きることからは逃れられない。でも危機よりは全然マシですね。

 

サブスクと、まあ僕はApple Musicなのだが、それらと契約をしていると、本当に聴く暇がないくらい新譜が押し寄せてくる時期がある。贅沢なことではあるのだが、たくさん聴くものがあると前評判が良かったり、または他の多くの人が楽しみにしてる作品が自分には全然ハマらなかったりする。いや品質の問題ではないのだ。作り込みの丁寧さには舌を巻くし、評価されるのも頷ける。だけどこのタイミングにおいては僕は「たまたま」選ばれなかった。選んだのは僕だが、僕は作品に選ばれなかった。聴く作品を重ねるにつれてそんなことを思うことが増えていく。

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多くの期待されるアーティストが新譜をリリースする中で、僕は佐藤千亜妃の『BUTTERFLY EFFECT 』が肌に合った。傑作と言えるような作品ではないと思うのだが(もちろん駄作というわけでもない)、佐藤千亜妃が聴いてきた音楽と、彼女が書いてきた楽曲、そして今は活動休止中のきのこ帝国における彼女の印象がようやくひとつになった、と言える作品だと思う。

というのもこれまでのソロ2作は無理をしていたように思えたからだ。もちろんメンバーが家業を継ぐというやむ得ない事情があるとはいえバンドを休止し、自分の名前で勝負しなければならない境遇で無理しないことの方が無理な話だが、その力みが取れたように僕には見えた。

今を煌く幾多りらを迎えながらまったくフューチャリング感のない「線香花火」のささやかさも素敵だし、宇多田ヒカルの「Automstic」を大胆に用いた「タイムマシーン」でルーツを隠さない姿勢も良かった。しかしやはり個人的に中盤の「華曇り」と「真夏の蝶番」がもっとも佐藤千亜妃らしい曲だと思う。この繊細さと、良い意味でブラックミュージックの要素が薄まったリズム感が彼女の日本語の歌詞との相性が抜群に合っていて、たまらなく切なくさせられる。きのこ帝国というフォーマットではない場所でも佐藤千亜妃の魅力がふんだんに込められた楽曲だと思う。

世の中の多くの人に届くような名曲だとは思わないし、音楽ファンを唸らせるような圧倒的な作品だとは正直思わない。だけどある程度彼女が歩いてきた道に接点がある人にはきっと届き喜ぶような作品集だと思う。僕はとてもうれしくなって、何度もこのアルバムを聴いている。きっと僕はこの作品に選ばれたのだ。